スタンプ紙幣と地域紙幣キームガウアーの流通 ~経済を好循環する通貨
◆お金=血液
お金は、人間の血液と同じで、経済の中で常に循環していないと、やがて経済(社会)は死んでしまいます。
経済を活性化させるためには、モノやサービスを購入する手段として、お金は繰り返し使われ続けて、一か所で留まらないようにしなければいけません。
ヨーロッパの経済大国・ドイツでは、
最新テクノロジーによって、お金を効率的に循環する仕組みが地域社会レベルでも既に実行されています。
<ドイツの事例に学ぶ>
学者ゲゼル発案のスタンプ紙幣と現代の地域紙幣キームガウアー
<1990年前の世界恐慌の時代>
人々は景気が悪くなり、将来を心配してお金を手元に貯金し、消費に使わなくなっていました。
➡お金が世の中で出回らないことにより、さらに経済が停滞する悪循環が発生
そこで、ドイツ人の実業家・経済学者シルビオ・ゲゼル(Silvio Gesell, 1862.3.17 - 1930.3.11)は、国内の経済停滞を解消する仕組みを考案しました。
経済学者シルビオ・ゲゼル提唱『お金に使用期限をつけること』
このアイデアは、使用期限が来るたびに、国から一定割内の額のシール(スタンプ)を購入して紙幣に貼らないと、その紙幣が無効になってしまうシステムでした。
日本円で例えてみましょう。
1万円札の有効期限が1週間、有効期限が切れたら額面の1%分のシール購入が必要になると日本政府に設定されたとします。
あなたの1万円札は使わずにタンスにしまっておいたら、
翌週には無効化・「0円」となり、お店で使えなくなります。
そこで、あなたが有効期限切れの1万円札を使うためには、
まずは銀行か郵便局で1%分にあたる100円の「復活シール」を購入します。
有効期限切れの1万円札にこのシールを貼ります。
これでやっと1万円としてお店で使えるようになります。
※100円で復活シールを買っているため、1万円紙幣の実質的価値は9900円に目減りしています。
何もしないだけなのに、1万札紙幣の価値が1週間ごとに100円ずつ減っていきます。
消費者が購入を後回しにすれば、少しずつ確実に損をしていくため、消費行動が促進するという原理です。
ほっておいた鉄が自然と錆びていくように、お金の価値が目減りする、
これが、別名『錆びる紙幣』と呼ばれた、スタンプ紙幣の仕組みです。
無計画な預貯金の防止 ➡ お金の好循環 ➡ 経済が活性化
しかしながら、当時は紙幣を正確に管理できるテクノロジーが未発達で、紙ベースでの事務手続きの煩雑さから、一般社会に普及できないアイデア止まりに終わりました。
また、一歩間違えれば、国民を破産させかねません。
計画的な支出ができずに消費だけが加速してしまう危険性が大いにあるため、
有効期限や目減り割合の設定はとてつもなく難しい判断を迫られます。
地域紙幣キームガウアーとは
ドイツ南部の町トラインシュタインでは、最新のテクノロジーや電子マネーを使うことにより、ゲゼルが提唱したスタンプ紙幣のアイデアを現代社会に実現させました。
◆買い物で使われる地域通貨「キームガウアー( Chiemgauer )」
【キームガウアー( Chiemgauer )のホームページ】
※ドイツ語が書かれているため、私には読めません。グーグル翻訳推奨。
【地域通貨キームガウアーの仕組み】
・利用者はキームガウアー通貨と€ユーロ€を1対1の比率で等価交換して、データとしてカードに入金(支払いはカードで簡単決済)
・使わなければ、年間で6%が自動的に目減りしていく仕組み
・地域内で4000人以上が利用中のサービス
なぜキームガウアーを利用するのか?
◆目減りする通貨を使う理由
両替額の3%が加算され、その加算額を好きなNPO団体や施設へ寄付することができる(※利用者に追加費用はかからない)
➡社会貢献に繋がるとの理由から、この仕組みに賛同する人が利用中。
まず、第一にNPO団体は資金調達ができて助かります。
次に、キームガウアーを支払いで受け取る商店や企業は、社会的なイメージアップに繋がります。さらに顧客の獲得と維持(囲い込み)効果も期待。
なお、受け取ったキームガウアーは価値が目減りしないよう期限内に使おうとするので、消費者と企業でお金の好循環が継続して、地域経済が活性化。
使用期限のある「キームガウアー」により、多くの人がお金を貯めこむ選択を止めて、積極的に使う選択をしています。
停滞する日本経済にとっても、一つのヒントになりそうです。